Fail School·公開 2026.05.12·閲覧 45
アンケート100人より深いインタビュー1人が100倍正確(Mom Test)
23人アンケートで作った機能はコケて、5人インタビューで売上を2倍にしたチームの違い。Mom Testフレーム、1時間インタビュー進行、Claudeで文字起こしを分析するワークフロー。
アンケートより、1時間のインタビュー1本が100倍正確です。
アンケートで沈んだチーム、インタビューで生き返ったチーム
2023年、ソウルのあるSaaSチームがありました。マーケティング自動化ツールを作っていたチームは、「機能で何が一番必要か」の答えを得ようと、Google Formsでアンケートを作りました。100人にメールを送り、23人が答えました。「レポート機能が必要」48%、「API連携が必要」35%、「価格を上げてもいい」41%。データを集めました。
リーダーはまずレポート機能を作ることにしました。3週間、しっかりコーディングしました。リリースしました。誰も使いませんでした。
一方、別のチームは「うちの顧客5人と1時間ずつ話してみよう」と始めました。カフェでアメリカーノをおごりながら、本当にどう仕事しているかを見ました。途中で偶然耳にした言葉があります。「設定が複雑すぎて、最初の3日は基本設定だけで終わりました。」 その一言が、機能よりオンボーディングガイドが大事だと教えてくれました。3時間でガイド動画を作りました。売上が2倍になりました。
アンケートは「広く浅い」データ、インタビューは「狭く深い」データです。 MVP検証には深いデータが必要です。
Mom Test、母にも嘘をつけない質問
おすすめの本があります。『The Mom Test』(ロブ・フィッツパトリック、2013)。タイトルからして面白い。「母さえ嘘をつけない質問」という意味です。
母はあなたを愛しているから、いいことを言います。「あら、そのアイデア最高じゃない!」 でも市場で通用するかはわからない。本の核心は、誘導質問を避け、行動と事実に焦点を合わせること。
韓国文化では、相手を気づかっていいことを言うのが自然です。特に創業者が「うちのサービスでこの機能があったらいいですか?」と聞くと、答えはいつも「はい、いいと思います」。これは事実ではありません。
悪い質問
- 「うちのサービスは役に立ちそうですか?」
- 「この機能は必要だと思いますか?」
- 「うちのアプリ、わかりやすそうですか?」
すべて「はい」を誘導する質問です。
良い質問
- 「先週、この作業をどうやりましたか?」
- 「誰と一緒に仕事して、一番もどかしかった点は?」
- 「今使っているツールは何で、毎日何が引っかかりますか?」
具体的な行動と感情を聞く質問です。
架空のシナリオ。あるチームが「毎日の感情を記録するAI日記」を作りました。アンケートでは73%が「役に立ちそう」と答えました。でもインタビューで「あなた、最近感情を記録していますか?」と聞くと「いいえ、忙しすぎて」が多数。なぜを深掘りすると、本当の問題は「感情記録」ではなく「疲労管理」でした。機能をまるごと変え、そこから実際のユーザーが付き始めました。
良いインタビュー質問は「過去」を聞く
UXリサーチのプロがよく使うフレームがあります。「過去 → 現在 → 未来」の順で聞くこと。
- 過去:「この問題をどうやって解決しましたか?」(事実データ)
- 現在:「今はどうしていますか?」(現在の不便)
- 未来:「理想だとしたらどうやりたいですか?」(欲望)
注意。未来は最後に聞きます。もし「理想ではどうしたい?」から聞くと、相手はあなたのサービスに合わせて答えてしまいます。それは真実ではなく、「いいお客さんに見せようとする答え」です。
人は、自分の欲望よりも現在の行動で測るほうがずっと正確です。「あなたは1日何時間SNSをしたいですか?」より、「あなたは昨日、何時間SNSをしましたか?」の方が、ずっと正確なデータをくれます。
30分インタビュー質問テンプレート
[オープニング — 3分]
「お時間ありがとうございます。あなたの日常をまず知りたいです。
弊社のサービスの話はあとでします。」
[背景 — 5分]
- どんなお仕事をされていますか?
- 先週、月〜金はどう仕事しましたか?
[問題把握 — 10分]
- その中で一番時間がかかった部分は?
- それを解決しようとして何か試したことは?
- 今使っているツールは何で、毎日何が引っかかりますか?
[深掘り — 10分]
- 最後にその問題で、どれだけ失ったり挫けたりしましたか?
(お金でも時間でも、感情でも)
[クロージング — 2分]
- あなたと同じ状況の方を他に知っていますか?この構造で大事なのは3つ。
- 具体性:「一般的には」「普通は」が出たら、「先週の月曜はどうでした?」と具体例に引き戻す。
- 技術を持ち込まない:あなたのソリューションが顔を出してはダメ。「うちのアプリならそれ自動化できますよ?」は禁止。問題だけ深掘り。
- 沈黙に耐える:韓国文化では沈黙が気まずいけれど、質問のあとに相手の考える時間を取ると本当の答えが出てきます。3秒の沈黙にも耐えましょう。
1時間インタビュー進行、実戦5ステップ
1. インタビュイー選定(1週間前)
実際のターゲットユーザー5人を見つけてください。知り合いになければ、Disquietやオヌルジプ(オウル)のようなコミュニティで「1時間インタビューしたいです、アメリカーノおごります」と聞いてみてください。友達ではなく、実際に問題を持っている人であることが大事です。
2. 場所選び
カフェがおすすめ。韓国ではスタバやイディヤのようなチェーンより、街角のカフェの方が良い。固くなりすぎず、楽な会話の雰囲気が作られます。
3. 録音とメモ
「あなたの話を記録してもいいですか? お名前は控えません」と聞いてください。たいていOKです。スマホのボイスメモで十分。
4. インタビュー進行(60分)
テンプレートを使いつつ、流れを切らないでください。もし相手が「うちのチームの3人はいつも何か抜けてて…」と言ったら、その話を掘ってください。そっちが大事かもしれません。
5. クロージング
「こうしてお話聞かせていただいて、本当にありがとうございます。同じ状況の方がいたら、ご紹介いただけたら嬉しいです。」 最初のインタビューが、2人目への扉を開けます。
AIで文字起こし分析、パターンを見つけるワークフロー
ここから面倒な部分です。音声をテキストに変換し、パターンを探す作業。
Step 1. 音声 → テキスト(OpenAI Whisper、無料)
Google Colabで無料で使えます。Claude Codeを使えばもっと簡単。30分の音声でも2分でテキストになります。
Step 2. テキスト → 分析(Claude)
文字起こしをClaudeに渡して、こんなプロンプトを投げます。
下記はマーケティング担当者とのインタビュー文字起こしです。
このインタビューで本人が言った「本当の問題」を見つけてください。
(直接言った問題ではなく、暗黙的に表れた問題)
分析基準:
(1) 繰り返されるキーワード
(2) 感情の強度
(3) 実際の行動
(4) 今のツールでも解けていない部分Step 3. パターンを見つける(5人インタビュー後)
5人をインタビューしてそれぞれ分析すると、「あれ、この問題は5人とも持っている?」と見えます。これがシグナル。あなたは5人の偶然ではなく、市場のパターンを見たのです。
あるチームの実例。5人のカフェインタビュー録音をClaudeで分析したら、「ユーザーはUIではなくオンボーディング段階で90%離脱する」と発見。機能開発ではなくガイド動画に投資した結果、1か月後にリテンションが35%から62%に上がりました。
インタビュー後チェックリスト
- 録音は受け取ったか?
- 最低1つの具体的な不便を聞いたか?
- 「アンケートでも答えてそうな」一般的な答えではなく、具体事例を3つ以上聞いたか?
- 「未来に使いたい」ではなく「先週、実際にやった行動」を基準に記録したか?
- 次のインタビュイーを紹介してもらったか?
まとめ
1時間のインタビューはアンケートの「精度」を5倍〜100倍引き上げます。ただし1つの限界があります。「知っていて欲しがる」のと「実際に支払う」のは違うということ。
「はい、その機能あったらいいですね」と言った人は、本当にお金を払うでしょうか? 次の記事では、インタビューだけでは検証できない最後の関門を扱います。Fake Door Test、作る前に売ってみるです。
参考資料
- Rob Fitzpatrick, The Mom Test, 2013.
- PMF検証のために顧客と話す方法:The Mom Test要約 — OTHERHAND VENTURES
- オヌルジプ、Disquietなど韓国スタートアップコミュニティでのユーザーインタビュー募集事例(2024〜2026)
- OpenAI Whisper — 無料の音声認識API
- NotebookLMとClaude Codeの使い方
前の記事:AIを答え機ではなく鏡として使う
次の記事:作る前に売る、1万ウォンで100人の意向を確かめるFake Door Test
キム・ミンチュル、Freeive CEO、フェイルスクール
Comments
コメント 0
サインイン状態を確認中…
コメントを読み込み中…